顔面神経麻痺の種類
急性顔面神経麻痺は、回復性麻痺と非回復性麻痺に分類されます。急性麻痺の場合、回復性および非回復性のいづれにしても、早く治療した方が回復の可能性は高くなります。以下に、回復性の急性顔面神経麻痺について説明します。(非回復性の修正顔面神経麻痺についてはこちらをご参照ください)
回復性の急性顔面神経麻痺
顔面神経麻痺の70%以上は、ある日突然に起こる麻痺です。鏡を見て顔が歪んでいることで、麻痺に気がつきます。これはベル麻痺(あるいは特発性麻痺)、ハント症候群、および神経炎による急性麻痺によるものがほとんどです。麻痺の原因の半数以上を占めるベル麻痺は、近年、単純性ヘルペスウイルスI型の感染、あるいは再活性化が原因とされていますが、明らかな病因が同定できない場合も多く、特発性顔面神経麻痺とも言われます。
ハント症候群などの原因といわれる帯状疱疹ウイルス感染症や神経炎では、神経の腫れ(浮腫)と血流障害(虚血)が生じます。そのため、急性期の治療は、薬物療法や手術(神経の通り道を広げる減荷術)で神経への圧迫を取り除き、神経の変性を防止することが目的となります。発症してから約1ヵ月を過ぎると、神経の適切な再生を目指し、リハビリや薬物療法、神経ブロックなどが治療の中心となります。
このような急性の顔面神経麻痺は、その80%以上が1年以内に回復します(そのため、回復性麻痺とも呼ばれます)が、数%は完全麻痺、10数%に異常共同運動を伴う不完全麻痺という後遺症が残ってしまいます。特に水痘ウィルスの感染症であるハント症候群では、麻痺の後遺症がベル麻痺よりも高い確率で起こります。なお、急性顔面神経麻痺の後遺症として慢性化して残ってしまった顔面麻痺のことを、陳旧性顔面神経麻痺と呼びます。
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