形成外科が扱う疾患について
形成外科が扱う疾患は、非常に広範囲です。大きく分けると先天性疾患と後天性疾患の2つに分類されます。その他、疾患ではありませんが美容医療も扱います。
詳細については、日本形成外科学会のホームページ「疾患紹介ーこんな病気を治します!」にも多くの疾患をご紹介してありますのでご参照ください。
なお、杏林大学の形成外科で特に力を入れて行っている治療につきましては、当科の特長をご覧下さい。
ご存知ですか?その1: 似ているようで違う? 「形成外科」と「整形外科」「形成外科(けいせいげか)」と「整形外科(せいけいげか)」って、発音が似ていますね。 ときどき、混同している方もいらっしゃるようですが、扱う疾患が異なります。 形成外科は主に体表部の疾患を扱うのに対し、整形外科は主に骨や関節(運動器)に関する疾患を扱います。もちろん、どちらの科でも治療する症例もあります。 |
1.先天性疾患(生まれつきのもの)
(1)顔面および頭部
唇裂・口蓋裂および他の顔面裂(正中裂、斜顔面裂、横顔面裂など)
頭蓋骨早期癒合症:短頭、斜頭、舟状頭など
頭蓋顔面骨癒合症:クルーゾン病、アペルト病など
第一・第二鰓弓症候群 (Hemifacial microsomia)
耳の異常:耳垂裂、立ち耳、折れ耳、小耳症、埋没耳(袋耳)、副耳、スタール耳、など
外鼻の異常:唇裂鼻変形、斜鼻、半鼻症など
目の異常:眼瞼下垂、離眼症(ハイパーテロリズム)など
顎、頸部の異常:小顎症、翼状頸など
(2)四肢
合指(趾)症、多指(趾)症、巨指(趾)症、裂手(足)症、先天性絞扼溝症候群など。
なお、手と足には同じ症状が発生することがあります。
(3)体幹
ポーランド症候群、漏斗胸、鳩胸、尿道下裂、臍の異常など
(4)母斑 (いわゆる「あざ」)・血管腫
上皮系母斑:表皮(硬)母斑、脂腺母斑など
神経櫛系母斑:母斑細胞母斑(色素性母斑)など
扁平母斑、 青色母斑、蒙古斑など
間葉系母斑:血管腫、リンパ管腫など
全身性:プリングル病、ポイツ・ジェガース病、レックリングハウゼン病など
局所性:スタージ・ウェーバーr症候群、クリップル・ウェーバー症候群など
(ご注意)
皮膚の腫瘍と母斑(あざ)は混同されやすいので注意が必要です。母斑(あざ)は先天性異常ですが、腫瘍は後天性疾患になります。ただし、血管腫、リンパ管腫の中にははどちらともいえないものもあります。
2.後天性疾患(生まれつきの疾患以外のもの)
(1)外傷
軟部組織損傷:顔面損傷(顔面神経・耳下腺管切断を含む)、四肢の切創、挫創など
熱傷と瘢痕拘縮、瘢痕とケロイド(keloid)
手・足の外傷:腱や神経の断裂
切断四肢再接着術(マイクロサージャリー)
(2)顔面骨折、手指骨骨折
(3)腫瘍
A. 皮膚腫瘍:
*良性腫瘍―
上皮性:上皮腫(石灰化上皮腫、アクロコルドン-skin tag-など)
嚢腫:粉瘤-アテローム、類上皮腫(デルモイド嚢腫)など
結合組織性: 線維腫(皮膚線維腫)、ケロイド
脂肪性: 脂肪腫、黄色腫
その他:筋性(筋腫)、神経系腫瘍(神経線維腫、神経鞘腫、神経腫)
*悪性腫瘍―
基底細胞癌、有棘細胞細胞癌、悪性黒色腫、その他(肉腫、転移性癌、悪性リンパ腫など)
B. 耳下腺腫瘍
病理組織像は多彩。過半数は多形性腺腫とワルチン腫瘍(共に良性)ですが、腺癌、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、多形性腺腫内癌、扁平上皮癌などの悪性腫瘍も比較的多いので注意が必要です。
また、切除に際して、顔面神経麻痺を起こす危険の多い疾患です。
(4)潰瘍(特に難治性潰瘍)
褥瘡(病院には褥瘡対策委員会の設置が必要)
血管性潰瘍(糖尿病など)
放射線潰瘍、壊死
骨髄炎 など
(5) その他の疾患
変性疾患:ロンバーグ病(進行性顔面半側萎縮症)、強皮症など
陳旧性顔面神経麻痺:マイクロサージャリーによる再建
他科との関連疾患(特に癌切除後の再建)
乳房再建
頭頸部再建 など
3、美容医療 (原則的に疾患ではありません)
(1)手術を行う:美容外科
重瞼術、隆鼻術、フェイスリフト、豊胸術、脂肪吸引など
(2)手術を行わない:美容皮膚科
ケミカルピーリング、トレチノイン治療、フィラー、ボトックス治療、各種レーザーによる治療
(ご注意)
美容外科は、疾患(病気)ではありませんので保険適応になりません。自費診療扱いになります。