顔面神経麻痺の基礎知識
顔面神経麻痺の症状
損傷した顔面神経の部位や程度(完全麻痺か不完全麻痺か)によって、現れる症状はさまざまです。
涙液分泌障害、味覚障害、聴覚過敏、などの自律神経症状を伴うこともありますが、患者さんにとって最も煩わしい症状は、表情筋(顔の表情を作る筋肉)の麻痺によって顔が動かなくなることでしょう。
末梢性顔面神経麻痺の場合、顔面神経は左右それぞれに存在するので、麻痺により片方の顔が動かないという、顔面の非対称が起こります。具体的には、おでこにしわをよせる筋肉(前頭筋)の働きが悪くなり、眉が下がり目が開けにくいなどの症状、目を閉じる筋肉(眼輪筋)の働きが悪い場合は、目が閉じにくい(目が閉じない)症状、目が乾燥する、涙があふれるなどの症状などが出現します。また、頬の筋肉や口のまわりの筋肉の動きが悪い場合は、笑えない(いわゆる法令線ができない)、顔がゆがむ、頬・口角が下がる、口が垂れる、食べ物がこぼれるなどの症状も出てきます。これらの症状は、麻痺側の動き方によって、完全麻痺または不完全麻痺に分類します。
急性麻痺の原因としてもっとも多いベル麻痺やハント症候群などの場合には、これらの症状は薬物治療などにより回復することも多いのですが、完全には回復しない場合や、麻痺がある程度回復した人でも、顔が勝手に動く、頬がひきつる、口の動きで目が閉じてしまう、などのさまざまな後遺症(異常共同運動、病的共同運動*)を残すこともあります。特に、口をとがらすと目が勝手に閉じるという異常(病的)共同運動は、人と食事をするときなど非常に気になるもので、患者さんのもっとも嫌がる後遺症の一つです。これらは陳旧性麻痺の症状として、固定化してしまっておりますので、症状に応じた形成外科的治療が必要です。
(*異常共同運動=病的共同運動と同じ意味です)
下の図は、いずれも向かって左側に麻痺がある症例です。
(マウスポインタをイラストの上に動かすと、目を閉じた状態になります)
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