熱傷・瘢痕・ケロイド

熱傷(ねっしょう、やけど)

 熱傷は初期治療が一番大切ですが、杏林大学には熱傷センターが併設されており、救急外来を受診する重度熱傷の患者さんの治療に形成外科が協力しています。また、全身管理が必要でない小範囲の熱傷患者さんは、最初から形成外科で治療を行っています。

 熱傷の重症度は一般に深さ(熱傷深度)と 広さ(熱傷範囲)で決められますが、高齢者や小児、また、部位によっても重症度は異なります。熱傷の深さは、I度(日焼け程度、皮膚の発赤、痛みと熱感)、II度(浅達性と深達性に分かれます)とIII度(真皮層以上の深いもの)に分けられます。I度と浅達性II度の熱傷は瘢痕を残さず治りますが、深達性II度とIII度熱傷は瘢痕が残ります。また、浅達性II度の熱傷でも感染により深達性II度の熱傷になり、瘢痕を残すこともあります。深達性II度とIII度の熱傷面積を合わせて体表面積が20%以上(小児や高齢者では10%以上)になると広範囲熱傷と呼び、入院の上、輸液、感染防止などの適切な処置を行わないと死に至る危険があります。その他、火事などで煙を吸い込んで起こる気道熱傷なども致死率の高いものです。

熱傷深度イラスト  
熱傷(深度3)

左上:熱傷深度のイラスト

左下:熱傷(深度3)症例

下表 :熱傷深度と状態の比較

 

深度 傷害組織 外見 症状 治癒期間 瘢痕

I度
(EB:epidermal burn)

表皮・角質層まで 発赤、充血 痛み、熱感 数日 残らない
浅達性II度
(SDB:superficial
dermal burn)
表皮・有棘層、基底層まで 水疱、発赤、腫れ、湿潤 強い痛み、灼熱感、知覚鈍麻 約10日間 残りにくい
深達性II度
(DDB:deep dermal
burn)
真皮・乳頭層、乳頭下層まで 浅達性II度と
ほぼ同じだが、やや白くなる
浅達性II度と
ほぼ同じだが、知覚鈍麻が著しい
2週以上 残りやすい
III度
(DB:deep burn)
真皮全層、皮下組織 壊死、炭化、乾燥、白い 無痛、知覚なし 1ヵ月以上 残る

*上記表の出典 :フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」 熱傷 3.1熱傷深度より (最終更新 2009年11月26日 (木) 12:47)

 

瘢痕・瘢痕拘縮 (はんこん・はんこんこうしゅく)

 皮膚に残る傷跡(きずあと)を一般に「瘢痕」と呼びます。瘢痕の原因は、交通事故、転倒などさまざまな外傷が主なものですが、外科手術によっても瘢痕が残ります。しかし、瘢痕が広い範囲に残り目立つ後遺症となるのは熱傷です。熱傷の深度が瘢痕の主な原因で、深達性II度以上の熱傷は必ず瘢痕を残します。瘢痕は生体が傷(創)を治すための生理的反応で、傷(創)の収縮と上皮化の過程で線維芽細胞、膠原線維などが増殖して起こります。通常の治癒過程では、瘢痕は白く平らな傷として治りますが、時には、赤く盛り上がって肥厚性瘢痕(あるいは瘢痕ケロイド)となります。

瘢痕拘縮写真
瘢痕拘縮

 また、熱傷が手指や手・足の関節、顔面・頚部に起きると、生じた瘢痕により関節の伸展が不自由になったり、開口障害、閉瞼障害が起こります。これらは瘢痕拘縮と呼ばれ、その部分に皮膚の不足により生じるため、植皮術による拘縮の解除手術が機能回復に必要となります。

  

ケロイド

 瘢痕が通常の皮膚より異常に盛り上がり、赤くて、かゆみや痛みなどをともなう腫瘤状の隆起になるとケロイドと呼ばれます(瘢痕ケロイド)。なお、瘢痕ケロイドは傷の直りが長引くと起こりやすいのですが、大きな原因が無く発症するケロイド(真性ケロイド)もあります。一般にケロイドは、体質的な素因も原因の一つとなっており、治療に難渋することの多いものです(日本形成外科学会HP「形成外科が扱う疾患」へリンク)。

ケロイド症例写真

 左:上腕部のケロイド

 右:ピアスによるケロイド

ケロイド症例(肩ー腕) ケロイド症例(耳)

 

 

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