このページは、2013年「気まま日記」の一覧です
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教授の常識?
2013年8月31日
最近の報道で教授の不祥事に関するものがいくつかあったように記憶します。
代表的な一つは、文部科学省より支給される科学研究助成金の不正使用に関するものでした。約20年前にも、このことは東大を中心に大問題となりマスコミを賑わしました。問題は非常に単純な事で、禁止されている助成金の目的外使用でした。当時は助成金の使用目的と期間が強く制限されており、例えば、年度を越えて使用できないので、継続研究には年度の終わり近くに残した資金を次年度の助成金が支給されるまでの期間の研究に使うため薬品仕入先などに「預け金」にしたためです(現在は年度を超えて使用できるようにはなっているようですが・・)。歴史は繰り返すというアホみたいな話ですが、この件以外にもいくつか同様のことがあったように思います。
もう一つは、驚くべきことに某地方国立大学の教授が留学生を、知人のクラブにホステスとして斡旋していたことです。さらに、そのクラブは無許可営業だったというのですから、いったいなにを考えているやら。多分、この教授の言い分は、お金に困る留学生の金銭的面倒をみている積りなのでしょうが・・・あまりに稚拙な行動にあきれ返りますよね。
これは教授の選考という根幹的な問題にもかかわるのでしょう。教授の選考は第一に学問的業績ですから、人格的な問題は二の次になりがちです。もちろん、教授というからには、それなりの学問的業績は必須ですが、それ以外に、教え子(学生ならびに自分の部下)の面倒をみる、のは当たり前でしょう。この意味では、留学生にバイト斡旋した教授は面倒見の良い方ともいえますが、無許可営業クラブのホステスではね・・・。問題になるのは当たり前なのに、それに気がつかないのはいかに社会性がないかということですよね。
前者の助成金の問題教授にしても、20年も前から問題視され多くの大学が国の査察を受けたほどなのに、まだ、やっているのかという常識のなさにバカバカしくなりますね。 こんなことで教授職をクビになるのは、あまりにも情けなく、いろいろ経験してきた元教授としては情けなさを通り過ぎるアホ事件です。
世の中の教授がみんなこんな人達ばかりではありませんので念のため。しかし、自分のことしか考えない(もしくは、自分のことしか考えられない)教授が増えているのも事実です。厳しいお受験戦争で時間をすり減らした報いでしょうか。
暑くなりました
2013年7月22日
--暑中お見舞い申し上げます--
しばらく、ご無沙汰しているうちに、暑くなりました。
日本国中、省エネで男性はノーネクタイ、ボタンダウンのYシャツ姿が定番になってますね。外歩きをする会社員の方々は、ネクタイなど暑くてやってられないのは、よく分かりますが、室内にいる閣僚や高級官僚までがやる必要があるのですかね?
もちろん、人それぞれと思いますが、小生のように40年以上もネクタイ人生だった者には、なかなか受け入れ難いものがあります。
先日も日経新聞に昭和電工の会長さん(多分、かなり年配の方)がネクタイについて書かれておりました。その中に、オバマ大統領と習近平中国国家主席のノーネクタイ姿が野暮ったいと思ったと書かれておりました。小生も、オバマさんはともかく、習近平さんのノータイ姿は大変野暮ったく見えておりました。形成外科医として見ると、顔が細く、首の長い欧米人にはノータイ・Yシャツは結構さまになると思いますが、丸顔、猪首のアジア人の姿は野暮ったく見えてしまうのは仕方がないのでしょうね。日本閣僚でも阿部首相は細面なので、違和感が少ないのですが、オット!と思う国会議員さんも多いように思います。夏の選挙で日中飛び回る時は仕方がないと思いますが・・・。
小生の朝は相変わらず、ネクタイ選びから始まります。これは不特定多数の患者さんに対する臨床医の矜持と思っておりますが、流石に最近は若い医師には強要しておりません(2年前まではネクタイ・Yシャツでないと、外来診察に出しませんでした)。
服装は第3者に対する第一印象になるので、臨床医たるもの、心すべきことと信じてきております。もちろん、余暇はポロシャツでゴルフです(^。^)。
(以上、あくまで私見ですので、ご容赦ください。反論も多いと思います)。
形成外科と美容外科:第56回日本形成外科学会に出席して
2013年5月11日
4月の第一週に恒例(年に一度)の日本形成外科学会総会があり、今年は約2500名が出席し非常に活気のある学会になりました。会長の平林慎一帝京大学形成外科教授は小生の優秀な教え子の一人で、小生も大いに楽しませてもらいました。あまり会場にはいませんでしたが・・・・・・(笑)。
日本形成外科学会も創立以来50年以上になりますが、臨床医学、特に外科系医学の世界にはiPS細胞のような画期的な研究の話題がなかなかないもので、形成外科学会でも毎年の会長さんは学術プログラムの作り方に苦労しているようです。今年は、形成外科と美容外科の融合と、現在、二つある同名の日本美容外科学会に対する形成外科の対応や形成外科学会が美容外科を将来的にどのようにとらえていくかが大きな話題になりました。
もちろん、「形の外科」を目標にしている形成外科は、古くより他の診療科に比べて、「人の美」を作る美容外科に対しても、主要な診療範囲の一つとしてとらえてきました。一方、「美容外科」そのものは健康保険診療外治療(すなわち、自費負担)になりますので、診療費用の点など各クリニック間や病院での格差があり、不明朗な点、誇大広告などもあり、多くの問題があります。また、国民の多くに第二次世界大戦後に普及した「美容整形」という言葉と、美容外科は悪徳クリニックという印象が未だ残っているのは残念です。マスメディアでも「美容整形」といって取材に来られる時は、小生はその言葉を「美容外科」に直してくれないと取材に応じないと言ってます。でも、「美容整形」はイメージが分かりやすい言葉ですよね(笑)。
世界的にも一つの国にいくつかの美容外科や美容皮膚科関係の学会があるところは多いのですが、まったく同じ名称の二つの美容外科学会(日本美容外科学会)があるのは日本だけで、患者さんがとまどうことにもなります。この点については、残念ながら、二つの学会の歩み寄りは遅々としておりますが、平林会長は将来の医師専門医制度に向けて、色々と努力されていたのが印象的でした。
iPS細胞と再生医療
2013年4月18日
忙しさにかまけて、気まま日記をすっかり書かないうちに立春も過ぎ、あっという間に4月半ばを過ぎてしまいました。
昨年の秋は、iPS細胞(induced pluripotent stem cell、人工多能性幹細胞)の開発者である京都大学山中伸弥教授がノーベル医学賞を受賞され、誠におめでたいことでした。すべての再生医療がiPS細胞で可能になるような報道が毎日のようにマスコミをにぎわしておりましたが、M氏の有名なスキャンダルもマスコミ報道上に大きな汚点にもなりましたね。
残念なことに、小生が前主任教授であった東大形成外科・美容外科の助教がM氏と一緒に公的助成金を申請していたことがあったため、調査を受けたようです。
ところで、なぜ、iPS細胞と形成外科が一緒に研究するのでしょうか?疑問に思う方も多いと思います。
形成外科は「形を作る(再生、再建)する外科」として、古くより再生医療と深くかかわってきました。有名なものでは、「やけど」で失った皮膚の再生、さらに軟骨や骨の再生などいわゆるティッシュ・エンジニアリングと呼ばれているものです。
これは細胞培養や再生の足場となる組織材料の開発により、失われた組織と同等の組織を作り出して移植できるようにしようとするものです。われわれも、約20年以上も前からやけどの患者さんに、近い将来に人工の皮膚ができるかもしれないと言ってきました。しかし、数年前からやっと臨床応用ができるようになった自家培養表皮も、本当の皮膚と同じ構造をしたものではなく、強度などにもまだまだ問題の多いところです。
今回のiPS細胞でのマスコミの報道等を見ていますと、一般の方にはすべての臓器や器官が再生できるように思えるかもしれません。しかし、一つの独立した臓器や器官は、それを栄養する血管や神経も必要で、構成する細胞数も莫大なものです。
したがって、今すぐにそれらがすべて作られるとは考えにくく、山中教授も正直に臨床応用への道はまだまだ遠いと言われていたようです。いま、iPS細胞が直接的に効果を発揮しているのは、変性しつつある細胞をもとに戻す医療(各種の難病治療)、培養したiPS細胞でターゲットとなる細胞を作り出し創薬などの分野です。
ほんの少しの細胞から様々な臓器が作られる可能性は理論的には無限でしょうが、複雑な構造をした臓器や器官そのものを作りだして移植できるまでには、あと何年かかるでしょうか?
現時点においては、再生医療の難しさと限界があるように思います。が、今後の研究成果によっては、未来では不可能が可能になっているかも知れませんね。
久しぶりなもので、ついつい筆が進んでしまい、長文になってしまいました
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