このページは、2012年「気まま日記」の一覧です
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新年の御挨拶
2012年1月17日
気が付いたら、あっという間に小正月も過ぎてしまいました。遅ればせながら本年もよろしくお願いいたします。
年末からてんやわんやの忙しさでしたが、その理由は今年9月に会長を務めることになっております第4回国際創傷治癒学会連合会議の学術プログラム演題の締め切りが来ていたためです。
小生が形成外科医になった40年くらい前には、創傷(「そうしょう」と読みます)といえば、けが(外傷)かやけど(熱傷)が主だったものです。しかし、現在では、当時、外傷の代表であった車の事故によるもの(特にフロントガラスの破片による切り傷、やダッシュボードでの打撲傷)は、割れないガラス、エアバッグの登場で一気に少なくなりました。それと、最近の飲酒運転の厳しい取り締まりも事故外傷の防止に大きく貢献しているようです。また、やけどなども防護器具の進化により著しく少なくなっていると言えます。
一方、高齢化に伴う創傷で増加してきたのは、寝たきり老人の床ずれ(褥瘡)や、糖尿病に伴う下肢潰瘍、動脈硬化症などが原因となる下肢壊疽(壊疽)など、治療の難しい慢性・難治性創傷といわれるものです。
特に、成人病の代表でもある糖尿病や動脈硬化症による壊疽は、重症になると下肢切断で歩行ができなくなるため、生命予後が極めて悪くなることがよく知られています。
第4回創傷治癒連合学会会議では、このような難治性下肢潰瘍や壊疽の治療が、大きな焦点となるでしょう。これらの治療には、糖尿病など疾患そのものを治療する内科医、血管外科医、きず治療の専門家である形成外科医(日本創傷外科学会認定専門医)など多領域の医師、および、日常生活を支援する看護師(特に創傷・オストミー・失禁看護認定専門看護師WOCN)、栄養士など多くの医療従事者の総合的な力が必要となります。この学会がこれらの難しい疾患の、より良い治療を討論できるように頑張りたいと思います。
2月10日、フットケアの日
2012年2月10日
今日は2月10日です。今日は何の日でしょう?
足(フット)の病気に注意をしてもらうため、今年から日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会が2月10日(フー、トーの日)を「フットケアの日」として「足のケア」の知識を広めるそうです。
前回、糖尿病や動脈硬化という成人病による足・下肢の治りにくい潰瘍や壊疽が、近年、急増しつつあることを書きました。これらの潰瘍や壊疽は急に発症することもありますが、一般的には足先の小さな潰瘍などから大きな壊疽に進行するものです。
したがって、糖尿病、動脈硬化など心当たりのある方は、普段から足の手入れ(清潔に保つ、など)をしておいた方がよいのですが、あまり注意が払われていないようです。魚の目や水虫などから感染が急速に広がることもありますよ。
特に、重度の糖尿病や透析患者さんは足に注意を向けて、病気の悪化を食い止められるようにお願いします。
フットケアの日ポスターです。絵柄がかわいらしいですね。
なぜ Plastic Surgery?
2012年3月27日
形成外科の英語名は、Plastic Surgeryです。
もちろんご存知の方も多いと思いますが、なぜ ≪プラスチック≫か? 不思議に思われる方もいらっしゃるかと…。そこで今日は、名前の説明と由来を説明します。
一般的にプラスチック(plastic)は、ペットボトルや食品トレーなどに使われている可塑性素材を指すことが多いですね。これは、plastyという言葉に、「形を作る(=成形する)」「均整のとれた」という意味があるからです。これにサージャリー(surgery=外科)をつけると「形を作る外科」すなわち「形成外科」となります。
形成外科(けいせいげか)は病院診療科の1つで、「整形外科(せいけいげか)」と発音が似ているので混同されやすいのですが、扱う疾患は全く異なります。形成外科は、傷をきれいに治したり、癌などで失われた機能を修復して形を作る外科なのです。このきれいに傷を治す技術(ただ治すというだけでなく、きれいに治すということが重要です!)を応用したものが、いわゆる美容外科です。対して、整形外科は主に骨折など、骨の修復にあたります。
欧米には、古くからPlastic Surgeryという外科があることが知られております。このPlastic Surgeryの日本語訳について、形成外科、復形外科、プラスチック外科、成形外科、美容外科など、など、多くの名称が論議されたとの記録があります。結局、投票で一番多かったのが形成外科ということで、昭和33年に第一回日本形成外科学会が創設され、以来、「日本形成外科学会」と称し、今年で55年になります。
また、マスコミなどでよく「美容整形」という言葉が使われますが、私たち形成外科医はちょっと違和感があります。今日では「美容外科」という、厚労省で標榜診療科として認められた正しい呼び方があります。
私たちは、年を重ねると若い頃の容姿に戻りたいと願いますね。ペットボトルのリサイクルとまではいきませんが、アンチエイジングでちょっぴりお手伝いているのも形成外科です(美容外科の分野になりますがねー)。この意味では、復形外科というのも良い名称だったのかもしれません。
桜満開
2012年4月13日
前にも書きましたが、好きな言葉なので桜の花が咲くと、唐の詩人劉廷芝の詩にある「年年歳歳花相似、歳歳年年人不同」という一節が思い浮かびます。
この1年は特に「人同じからず」どころではなく、「日本国」自体が大きく変わってしまったように感じます。
東京では、いつもは卒業式の頃に咲いていた桜の花も、今年はすっかり遅れてしまい、今年はちょうど入学式の頃の開花となりました。
小生が小学生時代の入学式に見た景色をのようです。当時は今のようなPCゲームなどもなく、女の子は桜の花びらを糸でつなげて首飾りにしていたのを、懐かしく思い出しました・・・。
この写真は、都立善福寺川公園の桜です。ちょうど満開で、おもわず携帯で撮りました(4月10日撮影)。翌日11日(水)の雨と風で幾分散ってしましましたが・・・。今年の桜は、遅れて咲いてあっという間に満開で散ってしましました。
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学会準備のため・・・
2012年4月26日
あっという間に、桜の季節も終わり連休になります。小生自身も、年齢とともに体調などが変わりつつあるのを実感している昨今ですが、このところ、時間だけが飛ぶように過ぎていく感じです。
特に、今年は、9月初旬に行われます第4回国際創傷治癒連合会議(URL: www.wuwhs2012.com)の会長を務めるため、1月から約1200題近くの演題を学術プログラムに組み込む作業とシンポジウムやパネルの構成などや、資金集めなどの忙しさが骨身にしみています。
創傷は単なる「キズ」だけではなく、熱傷・外傷によるきずや傷跡の治療から、褥瘡などの治りにくい潰瘍(難治性潰瘍と言います)、最近急増している糖尿病などが原因の下肢壊疽や潰瘍など全身にわたる広い範囲のさまざまなものを含んでいます。このため、会議に参加される方々も医師(形成外科医、外科医、皮膚科医や糖尿病内科医など)以外に、看護師、栄養士、リハビリ関係者など幅広いため、学術プログラムの構成などに苦心する訳です。
9月の開催に向けて、これからますます準備に追われてしまいますので、しばらく、この日記も書けそうにありません・・・。 というわけで、この学会が終わるまで、徒然日記お休みします。
できるだけ多くの関係者の参加を期待して、9月にまた学会の報告ができることを念じております。
WUWHS2012 学会を終えて
2012年10月15日
御久し振りです。
9月2~6日にパシフィコ横浜で行われました世界創傷治癒連合会議(WUWHS2012)のため、目の回る忙しさでしたが、ようやく一息ついたところです。
この学会は世界の「創傷治療」にたずさわる医師、看護師のほか、栄養士、理学療法士さんなど多くの人たちの集まりです。そのため、医師でも、形成外科医のみではなく、糖尿病科、循環器科、血管外科など内科、外科の医師たちも参加されるので、会長である小生もまったく知らない方々がほとんどで、学会プログラムの調整等に大変疲れました。
また、昨年の大地震、原発事故などの不安に加えて、非常な円高で外国人の参加が大幅に減ることも予想されましたが、御蔭さまでグローバルに展開する創傷被覆材企業の支援などもあり、盛会裡に幕を閉じることができました。
写真は、WUWHS2012開会式で、小生は英語で開会の挨拶中(中央)。
参加者は、もちろん日本人が半数を占めましたが、世界50余か国よりの参加も加えて3000人を少し超える大きな学会になりました。本学会で討論した「創傷治療」は約16分野におよび、外傷・熱傷など急性の損傷から褥瘡などの慢性創傷まで非常に幅の広いものになりました。また、疾患も難治性創傷の代表であった褥瘡は、かなり議論も熟してきており、高齢化社会を迎えて、糖尿病・動脈硬化などによる下肢壊疽の治療やフットケアに新しい研究が発表されていました。
創傷治療には古くより皮膚の再生医療が研究されてきましたが、今回のノーベル賞受賞の山中教授のiPS細胞などの進歩もあり新しい展開も期待できるものと思っております。
つい、内容が難しくなってしまいましたね。また、ぼちぼち更新しますので、時々読んでください <(_ _)>