血管腫・血管奇形

 血管腫は「腫瘍」と「血管奇形」とに分けられます。腫瘍は一般的に「イチゴ状血管腫」と呼ばれるものです。「血管奇形」は血管内皮細胞の増殖がなく異常な血管の集合からなるものを指し、異常血管の種類により病状と治療法が異なります。

毛細血管の異常

「単純性血管腫」と呼ばれ、レーザー治療が効果的です

静脈の異常

「静脈奇形」あるいは「海綿状血管腫」と呼ばれます

動静脈の異常

「動静脈奇形」あるいは「動静脈瘻」と呼ばれます

リンパ管の異常

「リンパ管腫」と呼ばれます

 代表的な疾患を下記に記載します。もしこれらの病気を疑った場合は、形成外科あるいは皮膚科など専門医の診療をお受けなることをお勧めします。

 

イチゴ状血管腫

  生後すぐから体表にイチゴのような赤々した小さな盛り上がり(腫瘤)ができてきます。生後半年から1年までの間に、この腫瘤は次第に大きくなりますが(増殖期)、2-3歳頃より徐々に小さくなり赤みも減ってきます(退縮期)。小さなものでは、7歳くらいで自然に無くなることもありますが、腫瘤自体が小さくなっても、増殖に伴う余剰皮膚が変形として残り、手術を必要とする場合もあります。当科では、「増殖期」にレーザー治療を行うことで「増殖」の程度を軽減させる治療を積極的に行っております。

イチゴ状血管腫(レーザー照射前) イチゴ状血管腫(レーザー照射1年6カ月後)
イチゴ状血管腫 生後3か月時 5歳時の状態

 

単純性血管腫

 「血管奇形」のうち「毛細血管」が主な異常血管のものです。他の血管奇形よりレーザー治療が効果的です。レーザーの項目「単純性血管腫」を参照して下さい

 

静脈奇形

静脈奇形
静脈奇形 (海綿状血管腫)

 普段は皮膚が少し盛り上がり、押すと軟らかく中に血液を含んでいるので「ぷくぷく」とした感じがあります。静脈が主な異常血管で、拍動は触れません。病変の確認のために超音波検査、MRI、血管造影検査などの画像検査が必要となります。

 治療法は静脈奇形内の血流の早さにより「硬化療法」、「塞栓硬化療法(そくせんこうかりょうほう)」のどちらかが選択されます。「硬化療法」とは血管奇形内の血管に硬化剤という薬剤を注入して血管を固めてしまう方法です。また、「塞栓硬化療法」とは、「硬化療法」の前に「塞栓術」を施行するものです。血管奇形への流入血管を「硬化療法」の直前に塞栓子とよばれる物質を用いて流入血管を詰めてしまいます。その後、「硬化療法」を施行します。

 なお、病変が小範囲で限局している場合や、切除可能な部位であれば手術が選択される場合もあります。

 

動静脈奇形

 血管奇形の代表的なものの一つです。「毛細血管を通らずに直接に動脈から静脈に血液が短絡する(動静脈瘻)」ことにより病変が成り立っています。主たる異常血管が動脈であるため、周囲より温かくて拍動を伴い、赤黒く盛り上がり、あたかも心臓がもう一つあるような外観を示すものが多くあります。血管造影検査では、異常に太い血管とナイダスと呼ばれる血管病巣が早期に写し出されます。

動静脈奇形 動静脈奇形のCT血管造影写真
手の小指側にできた動静脈奇形 同症例のCTによる血管造影写真

 動静脈奇形は、病理組織学的には、個々の細胞は良性で悪性化することはまずありません。小範囲から広範囲を占めるものまで、進行の程度にも個人差が見られます。早期ではほとんど変化がないように見えますが、進行性であり、眼球周囲に発生した場合には失明に至ることもあり、また頬、くちびる(口唇)、歯やあごの骨などに発生した場合には醜形や大出血を生じることもあります。腕や足などの四肢においては骨の異常な発育・肥大が生じ、難治性の潰瘍などを合併することあります。進行すれば、重要臓器のみならず生命を脅かすこともあります。

 治療法は、可能であれば手術療法が選択される場合もありますが、多くは切除に伴う大量出血や機能障害を危惧し手術療法が施行できない場合が多いと考えられます。そのため病変の縮小をはかるための「塞栓硬化療法」がしばしば用いられます。また切除に伴う再発が生じた場合、進行速度が一段と増し、治療に難渋することも多い疾患です。

 

リンパ管腫

リンパ管腫
上腕部のリンパ管腫

 リンパ管腫はリンパ管の形成異常が原因で生じる先天性の疾患で、出生時または生後早期に出現します。組織学的には良性で、増生・拡張したリンパ管の中にリンパ液がたまり、腫瘤や水疱が見られます。皮膚や皮下組織だけでなく胸腔内や腹腔内など体の深部にも生じます。このうち形成外科で扱うのは整容的に問題となる、皮膚や皮下組織に発生したリンパ管腫です。

 皮膚や皮下に発生するリンパ管腫は、真皮浅層に見られる表在性(限局性)リンパ管腫と、真皮深層から皮下に存在する深在性(海綿状あるいは嚢胞状)リンパ管腫に分類され、それぞれのタイプで臨床症状や治療方針が異なります。

 この疾患は先天性の疾患であり、出生時あるいは、生後早期に出現し徐々に増大します。病変が大きければ大きいほど治療は難しく、また再発率も高くなります。したがって病変が小さいからといって放置することなく、積極的に治療することが整容面から考えても重要です。

 

 

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