顔面神経麻痺の種類

陳旧性顔面神経麻痺 (または陳旧性顔面麻痺)

 陳旧性顔面神経麻痺とは急性顔面神経麻痺の後遺症により、顔面神経麻痺が残った状態のことを言います。顔面神経麻痺の発症から長期間が経ってしまい、一定以上の改善が見込めないものを指します。医学的には、急性麻痺に対して、慢性麻痺と言う言葉を使いますが、顔面麻痺では陳旧性麻痺と呼んでいます。

 

 一般に、神経が損傷されてから1年以上経過しても神経の再支配が行われない場合、表情筋は脱神経性萎縮と呼ばれる萎縮(いしゅく)状態になり、回復が不可能となってしまいます。この状態の顔面麻痺を陳旧性顔面神経麻痺と呼び、麻痺の重症度によって完全麻痺と不完全麻痺に分類されます。

 

 陳旧性顔面神経麻痺の原因は、ベル麻痺やハント症候群の後遺症や、脳腫瘍(特に聴神経腫瘍が多い)、耳下腺腫瘍、外傷などによる顔面神経切断などが主な原因となります。また、先天的に生じた麻痺や、分娩時に発生する麻痺などもあります。陳旧性顔面神経麻痺では、顔面の筋肉がいわば死んだ状態にあるので、投薬等で回復することはありません。そのため、治療の一つとして、動かなくなった表情筋のかわりに別の場所から顔面に筋肉を移植して、表情を作る機能を再建する遊離筋肉移植術や移行術という形成外科的再建術を行います。この再建術は、広背筋(遊離広背筋移植)や薄筋(遊離薄筋移植)という筋肉を使った表情の再建手術や、左右のバランスを整えるため、麻痺して垂れ下がっている頬を吊りあげたり(フェイスリフトや筋膜の移植)、下垂した眉毛や、瞼を挙上して固定する(眼輪筋つり上げ術)などの再建術等を行います。

 

 なお、手術の適応や方法については、麻痺の症状や程度、麻痺部位、および、患者さんの希望によって異なってきますので、受診時にご相談ください。

(形成外科手術については【治療】 手術のページご参照ください)

 

 

前の話題:非回復性の急性顔面神経麻痺

次の話題:【末梢性顔面神経麻痺の原因】 ベル麻痺(Bell's palsy)

 

このページの最初に戻る


杏林大学医学部 形成外科・美容外科のトップページへ戻ります

形成外科についてのご説明

杏林の形成外科の特徴

受診にあたって

 

形成外科レジデント募集


杏林大学医学部
形成外科・美容外科

〒181-8611
東京都三鷹市新川6-20-2
TEL:0422-47-5511(代表)
FAX:0422-46-6138(医局)